婚姻費用に関し弁護士をつけるべき理由

  

1 婚姻費用をきちんと決めることの重要性
日本では一般的に、夫の方が多く稼ぎ、妻は主に家事・育児を行う家庭が多いです。
そのような家庭では、別居後、離婚するまでの間は、夫から妻に婚姻費用を支払ってもらうことで、同居中の家庭の経済状況に近づける必要があります。

婚姻費用の重要性は、それだけではありません。
特に、相手が離婚に簡単に応じそうにない事例では、適正な婚姻費用を、確実に支払ってもらうことで、離婚を促進する効果があります。
相手が離婚に前向きでない場合に、適正な婚姻費用より少ない金額を、相手が任意に支払っている状況では、相手はますます、「離婚しなくていいや」となります。

これに対し、適正な婚姻費用を、確実に支払ってもらうようにすれば、婚姻費用は離婚後の養育費より高いので、相手に、「離婚するまでこれを支払い続けなければならないのか」と思わせることができ、「いずれ離婚になるなら、早く離婚した方が余計に婚姻費用を払わないで済む」と思わせることができます。

このように、婚姻費用は、生活のために必要というだけでなく、離婚の話を進めるためにもきちんと決める必要があるということです。

2 婚姻費用を確実に支払ってもらうために必要なこと
婚姻費用については、相手に弁護士がついていない限り、基本的に、調停で決めることをお勧めしています。
一般の方は、裁判所で調停を行うことに抵抗がある場合が多いですが、婚姻費用については、「さっさと調停で決めてしまう」と考えた方がよいです。

その理由を説明します。
婚姻費用をさっさと調停で決めてしまった方がよい理由は、裁判所実務の運用にあります。
調停で婚姻費用が決まった場合、「調停を申し立てた月までさかのぼって支払う」とされるのが、現在の裁判所実務の運用となっています。

私は、この運用は間違っていると思いますが、裁判所が運用を変えない限りは、これを前提に対応する必要があります。

例えば、別居後、1月に相手に婚姻費用の支払いを求めたが、相手がなかなか回答しないとか、金額を争うなどしたため、なかなか合意に至らず、3月に婚姻費用調停を申立て、5月に調停で金額が決まったとします。
その場合、調停では、「3月までさかのぼって支払え」となる場合が多いです。
これに対し、相手との協議を先行せず、1月に婚姻費用調停を申し立て、3月に金額が決まれば、「1月までさかのぼって支払え」となるのです。

さらに言うと、例えば、相手が、調停をしなくても、こちらが請求した月額10万円を支払う、と約束したとします。
しかし、約束したとしても、ある月は8万円になり、ある月は支払いが遅れ、支払いを要求してもいつ支払われるかわからない、という事態になる可能性があります。
そのようなことが続いてから、婚姻費用調停を申し立てても、やはり、申立月までしかさかのぼらないことが多いので、それまでに支払われなかった分は取りっぱぐれてしまいます。
ですから、相手が「調停をしなくても任意に払うよ」と言った場合でも、注意が必要ということです。

以上より、相手に弁護士がついていない限り、婚姻費用に関しては、協議を先行させず、さっさと調停を申し立ててしまった方がよい、ということになります。
以上に対し、相手に弁護士がついている場合は、なかなか回答しないということもなく、適正な金額であれば支払いに応じることが多く、一度約束したらそれをきちんと守ることが多いので、必ずしもさっさと調停を申し立てた方がよい、とはなりません。

3 婚姻費用調停を起こすことを躊躇する必要はないこと
婚姻費用調停は、離婚の話と比べて、ドライなお金の話であり、2~3回で終了することが多いです。

また、金額で合意に至らなければ、裁判官が審判で金額を決めてくれることになっていますから、必要十分な主張・立証さえすれば、相手の自分勝手な言い分に付き合う必要がありません。
また、調停か審判で決まれば、相手が支払わない時は相手の財産の差押えができますから、確実に支払われると言えます。

さらに、婚姻費用調停は、離婚と違い、本人が来なくても進めやすいというのがあります。
実際には来る人が多いですが、弁護士に依頼すれば、来なくてもよいということです。

以上から、婚姻費用調停は、弁護士に依頼すれば、起こすのに躊躇する必要はなく、「弁護士に依頼してさっさと調停で決めてしまった方がよい」ということになります。

4 適正な婚姻費用金額を決めるために~調停委員は味方してくれない
婚姻費用を決める際には、算定表というものを参考にします。
しかし、算定表では大体の金額しかわからないため、正確な金額を出すには複雑な計算が必要です。
また、相手が住宅ローンを払っている時はどうするかとか、私学に通っている時はどうするかとか、自営の場合の収入の算出の仕方など、算定表からはわからないことが問題になることも多いです。

さらに、算定表からある程度金額がわかる場合でも、強気でうまく交渉できないと、自分の主張がなかなか通らないことがあります。
相手が感情的になったり、やたらと自分独自の見解をしゃべりまくったり、強気で主張するタイプだったりすると、調停委員にとっては扱いにくい相手ということになります。

そのような場合に、調停委員が、「これが適正な金額だから、これで合意しなさい!」と強く相手に言ってくれることを期待するかもしれませんが、残念ながら、調停委員はそういうことはしてくれません。
調停委員は、とにかく、「早く終わればよい」「双方がいいと言えばいい」という進め方をする人が多いのが実情です。
残念に思うかもしれませんが、彼らは裁判官ではなく、話合いを仲介しているだけなので、それでいいのです。
その結果、相手が扱いにくい場合は、気が弱そうで扱いやすい方に譲歩を迫るということが、よくあります(調停委員はどちらの味方もしてはいけないので、交渉力が強い方に有利になってもかまわないというか、むしろそれが当たり前という考え方をしています。それが嫌なら弁護士をつけるべき、という考えです)。
また、審判では、きちんと書面等で主張・立証をしないと、裁判官はその主張を採用してくれません。

以上のような状況があるので、適正な金額にするためには、弁護士をつけて、言うべきことは言うという交渉をし、また、必要な主張・立証をする必要があるのです。逆に、弁護士をつけないと、不利な金額で合意してしまうことがあります。

5 まとめ
以上より、別居したら、生活のためにも、離婚を進めるためにも、弁護士に依頼して、適正な婚姻費用を確実に支払わせるようにする必要があります。

当事務所では、婚姻費用に関する難しい問題を審判で争った経験が数多くあり、婚姻費用に関しては網羅的に深い知識・経験を有していますので、別居して婚姻費用を請求することをお考えの方は、是非一度ご相談ください。

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②離婚で弁護士をつけるべき理由・タイミング

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